★ネタバレあり 「Get over」JAM Projectのドキュメンタリー映画の感想

私が初めて買ったCDは、JAM Projectの「No Border」。

ニコニコ動画で流行った曲をメドレーにした組曲ニコニコ動画」。そこに組み込まれていたJAMのGONGを聞いたのをきっかけに、当時中学生だった私はニコニコ動画でJAMのライブ動画を見漁り、CDを買った。

初めて行ったライブもJAMだった。2008年、「No Border」を引っさげて行われたツアー。NHKホールに満たされるJAMの濃密な歌声、熱いファンの歓声、熱気、匂い。中学2年生の頃だっただろうが、うっすらと覚えている。通路側の席で、夢中でステージを見て、周りに少し圧倒されながら、他のファンの動きを真似ながら飛び跳ねて、すこし通路にはみ出したりして。今でもコンサートに行って盛り上がるのが一番好きな時間だが、その原体験はJAM Projectが与えてくれた。

母親もLAZYが好きで、ミッシェル(影山ヒロノブ)の大ファンだったという。親子で(音楽の方向性は違えど)偶然同じ人の音楽を好きになる、というのは不思議な運命のめぐり合わせだとも思う。

それから、コスプレにハマったり、ミュージカルにハマったり、色々な横道をそれながら、今では女性アイドル(ハロプロ)にハマっている。JAMのことは、中学生〜高校生までは熱中して追っていたが、徐々に他のジャンルに夢中になってしまい、2014年の武道館公演に参加したのを最後に、しばらく離れていた。

それから就職して、しばらくJAMに触れることはなかった。

 

久々にJAMの曲を聞いたのは、コロナで自粛期間に入った2020年3月。時間ができて暇だった私は、過去ハマったジャンルを再発掘することで時間を潰していた。ちょうどJAMが2019年のライブ映像をYoutubeで無料公開していたのを見ることができた。公開されていた1日目のライブ映像は、ちょうど私が知っている2013年以前の曲を中心としたセットリストで、懐かしい曲ばかり。10年近く経っても変わらない、というかなおパワーアップしている歌声に度肝を抜かれた。

今年、20周年記念ツアーを行うことを知った。よくハロプロのコンサートで行くオリックス劇場でも公演があるらしい。即チケットを買った。結局その公演含めツアーすべてが中止になり、行くことは叶わなかったけれど。

 

それからサブスクでJAMの曲を聞きまくり、離れていた期間を取り戻すようにたくさん聞いた。学生時代は一つの趣味を並行することができなかったけれど、今は適度な距離をとって複数の趣味を並行することができるようになった気がする。配信ライブもなるべく見た。やっぱり彼らの音楽は生で聞いて、一緒に盛り上がってこそなので、100%を受け取れなくて少し悔しい気もしたが。

 

さて、本題。

JAMProjectのドキュメンタリー映画「Get Over」の先行上映会に行ってきた。

 

オープニングは「SKILL」に乗せて、彼らのライブ映像を振り返る。先述の私が初めて行ったライブ(「No Border」NHKホール公演)も流れて、もうあれから13年も経っていて、それでもまだJAM Projectの新しい作品に触れられていることが不思議な感じがして、涙が出た。

その後、「Age of Dragon Knights」の各曲のレコーディング場面、それぞれのソロ活動にスポットを当てるパート、NY公演の裏側に密着したパートが続き、「JAM Projectの今後について」話し合う場面、そしてそれぞれの思いがインタビューによって語られる場面がある。ここが、この映画のハイライトだと感じた。

 

JAM Projectはボーカリスト集団であり、アニソンシンガーだ。どちらの点でも彼らはパイオニアであり、だからこその課題がある。

前者としては、各メンバーがそれぞれソロ活動をしていて、JAM Projectの活動がメインとは限らないこと。どちらがメインで、どちらがサブ、というわけではないし、その比重もメンバーによって様々、だからこそ難しい。 JAM Projectという枠、それでしかなし得ないこともあるし、そこには一種の「ゆらぎ」もある。

後者としては、アニソンシンガーというのはどうしてもタイアップに依存するところがあり、作風がマンネリしがちなこと。個人的には、JAM Projectの楽曲は「偉大なるマンネリ」だと思うが、入口も出口も広くはないだろう。また、タイアップがなければアニソンシンガーを名乗れないという怖さもある。

その課題を抱えた上で、向き合った上で、彼らは20年間走ってきてくれたのだ。

しばらく離れていても、変わらず歌を歌っている彼らの姿に勇気をもらったが、それが当たり前のことではないことを、目の前に突きつけられた感じがした。そして、20年という節目で、彼らがそこに一つの区切りをつける選択肢が存在していたことも。

 

いろいろな個性を持つ歌声が、一つの楽曲を作っていく、というアーティストが好きだ。JAM Projectもそうだし、Sound Horizonもそうだし、ハロプロはじめ女性アイドルもそう。もちろんボーカル1人の曲でもいいと思うものは多いが、色々な声で彩られる曲が好き、ということに最近気がついた。

複数のボーカリストがいる中で、固定のメンバーで楽曲を作り続けることは容易なことではないだろう。体力的な面でも、楽曲制作の面でも、商業的な面でも。

 

ただ、彼らの歌を今後も聞いていきたい。できれば、年に1回はライブで歌を聞かせてほしいし、いつまでもSKILLでジャンプしていてほしい。それがファンの願いだ。少しでも、その期間が伸びるように願いながら、今後もCDを買ったりライブに行ったりグッズを買ったり、ファン活動をしていきたい。というか、我々にはそれしかできないのだ。

JAM Projectの構造的な問題や、それに対するメンバーの思いまで迫ったこの映画、本当に素晴らしかった。2週間限定公開ということだが、もう1回は見に行きたい。